国際ジャーナリスト連盟(IFJ、本部ブリュッセル)の日本賞2017にベルギー在住、栗田路子さんの「豊かに生きるための安楽死」(ハフィントンポスト2017年5月9日掲載)が、選ばれた。この記事は、安楽死が法的に認められているベルギーで、パラリンピックの陸上競技車いすレースでメダルを獲得した38歳の元女性選手が、日々進行する病状に「安楽死」を公表し、死ぬ前に行きたいと思っていた日本旅行を実現したリポートである。
「安楽死」は日本では高齢者や病人を抱えた家族では話題になることはあっても、なかなか公的な議論にならない。意識がなくなったときにどこまで延命措置をするのか、本人や家族の意向より、日本社会にある独特の生命観が議論を妨げているような気がしてならない。そんなときに出会ったのが栗田さんの記事だった。選考委員会が全員一致で日本賞に選んだのは、高齢化の進む日本でも、「安楽死」問題を考えねばならない時期に来ているとの時代認識であった。聴けば、元選手の病状が進み、絶え間ない激痛に苛まれる今、最終的な判断の時期が迫っているとのこと。どのような結果になるにせよ、彼女のこれまでの人生が豊かで実り多かったことは間違いないだろう。
ところで、IFJ日本賞2017の候補となった多くの作品は、栗田さんらが主導するSpeakUpのメンバーによるものだった。SpeakUpに掲載されている記事を読むとき、一番役立つのは、外国の目線で書かれていることである。日本のマスコミは、日本的価値観で物事を判断し、記事にすることが多い。これでは、真実の理解に限界があると思えてならない。
日本のメディアからの外国在住のフリーランスの方々への原稿依頼も、日本的価値観を要求されることが多いと思う。どうしても偏りがでてくる。SpeakUpの掲載記事にはそれがない。外国で見たまま、感じたまま、を私たちに教えてくれる。日本化された記事ではないものを求めている読者がいることを思って、世界に散らばるライターたち、IFJのメンバーたちにSpeakUpへの寄稿をお願いしたい。
2017年2月
IFJ東京フリーランスユニオン事務長の奥田良胤氏
*SpeakUp上に安楽死のフォローアップ記事はこちらから
「安楽死は国民の権利。豊かに生きるための安楽死が定着するベルギー”>安楽死は国民の権利。豊かに生きるための安楽死が定着するベルギー」
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