国軍のクーデターに反対する市民の抗議行動が続くミャンマーで、フェイクニュースを発信したとして逮捕、訴追されていたミャンマー在住の日本人ジャーナリストが、ほぼ1か月ぶりに解放され、2021年5月15日に日本に帰国した。
帰国したのは、ヤンゴン在住の北角裕樹氏(45歳)。北角氏は、元日本経済新聞社の記者で、フリーのジャーナリストとして活動していたが、国軍のクーデターのあと、ヤンゴンで市民の抗議活動を取材し、海外に発信していた。
北角氏は2021年4月18日、フェイクニュースを発信した容疑で自宅で拘束された後、刑務所に収監され、訴追されていた。しかし突然釈放になり、直ちに日本へ帰国した。
ミャンマーでは報道陣への迫害が続いており、独立系40人以上のジャーナリストが拘束されている。5月2日には地元メディア「ミャンマー民主の声」の51歳の男性ジャーナリストに対して禁固3年の実刑判決が言い渡されており、北角氏の釈放は異例の措置である。
軍が釈放に踏み切った背景には、ミャンマー国軍の経済活動と深いつながりのある日本政府との関係が取りざたされており、ミャンマーの日本大使館などの強い働きかけがあったものと見られている。日本はODA(途上国援助)として、ミャンマーに対し、2019年だけでも1890億円を注いでいる。軍政府には重要な資金源である日本との良好な関係を保ちたいとの意向があり、それを利用して何らかの取引があったのではないかと憶測されている。
北角氏は、帰国した5月15日に記者団に対し「解放に努力して下さった関係者の皆さまにお礼を申しあげたい。ミャンマーで起きていることを伝えたいと思っていたが、帰国せざるをえなくなり残念だ。ミャンマーの人たちから実情を世界に伝えてくれと頼まれているので、今後も伝えていきたい」と話した。
また、NHKが5月16日伝えたインタビューによると、北角氏は「刑務所の中で自分は暴力を受けなかったが、厳しい取り調べを受けている人もいるようだった。取り調べで容疑を否認したが聞いてもらえず、向こうが容疑内容を作成した。政治犯が釈放されるように、今後も発信したい」と話している。