「最近Tシャツも買ってみたらすごく着心地がいいのよ」と、ヘンプ(産業用大麻)のオイルやナッツを健康食品として愛用してきたドイツ人の友人は一層ファンになったらしい。彼女のような、「少し割高でも、毎日の食料はほとんど無農薬栽培の原料から作られたBIO(有機)製品」というドイツの環境志向派が、BIOに続いて傾倒しているのがヘンプ製品だ。
産業用のヘンプには、医療用大麻と異なり薬理成分が0.2%未満しか含まれておらず、農薬なしでも約100日で3~4mに成長し、土壌改良効果など優れた特性をもつ。欧州では1989年に合法化されて大規模栽培が進んだ。欧州ヘンプ組合によると、EU内の生産量も中国からの輸入を加えた消費量も新記録を更新し続け、その用途は多岐にわたっている。日本でも近年かなり浸透しているヘンプ商品の品揃えと比べてみてはいかがだろうか。
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例えば、ヘンプ専門店では、衣類、バッグ、小物類、化粧品類からオイルやナッツ、チョコレートや飴、ビールまであり、ネットでも購入できる。また、ドイツで開発されたヘンプ断熱材は人体にも優しく、建物の省エネ、エネルギー効率向上かつ室内環境改善のため、需要が高まる一方だ。メルセデス・ベンツやBMWなどの自動車業界では、内装材にヘンプを使用している。
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ドイツ公共放送の科学番組を頼りにヘンプ史を辿ってみよう。医食同源の長寿食として知られるヘンプの実は、約1万2000年前からペルシャや中国で栽培されていた。ローマ帝国ではヘンプを巡る戦争もあり、戦場では傷の治癒に葉が重宝されたという。1455年最初の聖書印刷や、1776年アメリカ独立宣言草案に使われたヘンプ紙は、木材原料の紙よりもはるかに耐久性が高く変色しないらしい。
太古の昔から極めて有用な植物として利用されながら、1930年代には医薬品・綿製品・製紙業界などのロビイストによって市場から放逐されたヘンプ。だが、最近世界各地で盛んに復活してきた。15世紀にコロンブスがもたらしたヘンプで19世紀に最初のジーンズが作られたアメリカでは、医療大麻の合法化が進み、今年8月から麻薬取締局が、全米50州で医師の処方箋による大麻の使用を公認している。
縄文時代から大麻(おおあさ )と共に生きてきた日本はといえば、戦後GHQによる占領政策「大麻取締法」によって禁止されたこともあまり知られていない。だが、北海道議会が産業用大麻に取り組むなど、ようやく伝統産業が甦る兆しが見えてきた。ヘンプの種子油を車の燃料にする試みなども行われている。
ヘンプ人気上昇中のドイツに戻ろう。冒頭の友人のようなBIO製品を求める消費者が増え続けた結果、どこのスーパーでも様々なBIO商品が手頃な値段で買えるようになった。最近ヘンプ専門店では品切れが多く、ヘンプを売るBIO専門店も増えている。ドイツでは、ヘンプ製品もBIOのようにどこでも買えるようになる日が案外近いかもしれない。
とはいえ、子どもたち以降の世代が生きる地球のためには、世界中でヘンプ栽培を促進するほどの消費者の意識改革が急がれる。「地球環境を救う万能植物ヘンプの復活は、あなたの消費行動にかかっている」といっても過言ではないだろう。
大麻草には、ヘンプ、大麻(たいま)、大麻(おおあさ)、マリファナ、カンナビス等の様々な呼び方がある。本稿では、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、赤星栄志(あかほしよしゆき)氏の説に拠り、海外での産業用大麻を「ヘンプ」という呼び名に統一した。同氏は、大麻(おおあさ)とは、天照大神の印、自然崇拝、民族、風習、生活が一体となった日本の伝統材料とし、ヘンプとの違いを再定義している。
トップ画像:ヘンプの収穫 ©Foto Hock
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