エリザベス女王の夫、エディンバラ公爵フィリップ王配(以降フィリップ殿下)が4月9日に逝去した。2月に心臓の手術を受けてから退院し、ウィンザー城で静養中だった。生前は英国的なブラックユーモア溢れる仰天コメントをかますことでも知られていた。日本語に直すとあまりその強烈ぶりが伝わらないが、いくつか並べてみよう。
1967年、ソビエト連邦に行ってみたいかと聞かれて:「ええロシアにはとても行ってみたいですよ。自分の家族の半分がやつらに殺されましたけどね!」(家族=親戚であるロマノフ皇家のこと)
1986年、中国公式訪問で英国人留学生のグループに:「これ以上この国にいるとお前たちも横長の目になっちゃうぞ」
1992年、オーストラリアを訪れコアラを撫でてみませんかと言われ:「ごめんだよ、ひどい病気に感染するかもしれないもの」
2001年、宇宙飛行士になりたいと殿下に語った13歳の英国少年に:「宇宙飛行士になるには太り過ぎだな」
2009年、オバマ大統領夫妻から露、英、中国の首脳と朝食をしたと聞いて「誰が誰だか見分けられました?」
アボリジニに向かって「まだ槍投げしてるのかい?」など今ならSNSが大炎上するような放言も多く、差別反対者の間では「言いたい放題が許される旧タイプの男性がまた一人消えた」と喜ぶ声も。
英国政府は殿下の死去に伴い、すでにこの時のために準備されていた「フォースブリッジ作戦」を発動。女王は8日間公務を休み、更に30日間喪に服す。BBC国営放送局は訃報直後からロゴを白黒にし、全番組をキャンセル。殿下に関連するドキュメンタリーなどを終日流したが、「行き過ぎだ」とクレームが続出した。
国葬ではなく王室メンバーと友人たち、一握りの国賓参列者だけで、小規模な葬儀を行うようにと言い残した。「大騒ぎは嫌い」な殿下にふさわしい追悼が行われる予定だ。
<トップ写真:ピカデリーサーカスに大々的に掲げられたエディンバラ公爵フィリップ王配への追悼の表示、2021年4月10日、By Ubuhuju – Own work, CC BY-SA 4.0>