「政界の道化師」「英国のトランプ」と異名をとるボリス・ジョンソン首相が進退問題で揺れている。この「パーティゲート」疑惑をご存知だろうか。
(last updated on Feb 4, 2022)
By The White House from Washington, DC – #UNGA, Public Domain
欧州では2020年3月から強烈なロックダウンが行われた。英国でもしかり。国民は、世帯が別なら家族にも会えず、不慣れなテレワークに耐え、不安な気持ちで自宅に篭った。
5月に入ると極めて慎重な封鎖解除が発表された。ボリス政権が「それでも、家族以外の人との集まりは屋内では禁止、屋外なら2人まで、2メートルの社会的距離をとって」と説明した9分後、その裏庭ではワインとチーズのパーティが始まっていたことが写真付きの告発で明るみに出た。
ボリス首相による釈明は「仕事の会議だったんだ。」
当時のルールは、違反者には£100~3200の罰金。国民が怒るのは無理もない。
同じ頃、こうしたBYOBパーティ(アルコール飲料を自分で持ち込む飲食を伴う会合)は、合計10回以上も行われていたことが、かつての側近などの告発で次々とわかってきた。首相秘書官が100人以上も集まるパーティへの招待eメールを送っていた証拠も出てきて、首相夫妻はこの「仕事の会議」に出席していたことを認めざるをえなくなった。
極めつけは、エリザベス女王の伴侶フィリップ殿下の葬儀の前夜(2021年4月16日、国が定めた服喪期間中)にもパーティが開催されていたこと。英国民にとって、王室への無礼は強烈にささる。ボリスは慌てて女王陛下に謝罪に出かけた。
メディアががんがん厳しい追求を始めたこのタイミングで、ボリス政権はBBC(英国の公共放送)には契約料値上げは2年間許さないと発表 。まるで、トランプがホワイトハウスの記者会見からCNNを締め出そうとし、自民党閣僚が政権に批判的なテレビ局には電波停止をほのめかしたのにそっくりだ。
その上、同日、ボリスはジャーナリストにこう言い放った。「だって、誰も、(官邸の庭でBYOBパーティーを開くことが)だめって言ってくれなかったもん」。僕は悪くない、悪いのは周りの人だと言わんばかりだ。
これには、ジャーナリストばかりか、与党議員や側近たちも「首相自身が決めたルールですが…」と呆れる始末。
一連の報道では俄かに、スー・グレイという女性行政官の名前が連発されている。この方は現在、内輪の調査を粛々と進めている官邸勤務の公務員。告発や失言の続出に、彼女の報告は来週にずれ込むかもしれないという。
首相降板には、与党保守党議員から54人の不信任状が必要だが、すでに20人以上は反旗を翻しているとの報道も。英国には日本みたいなあからさまの党議拘束なんてない。トランプ大統領弾劾に到達できなかった共和党より、英国保守党議員のポリコレ感覚は健全だろうか。
「万一」の首相降板があれば、若手でインテリ、イケメンのリシ・スナック議員(42才)が後任とのうわさに、ちょいと期待してしまったりもする。
By Chris McAndrew – https://api20170418155059.azure-api.net/photo/IoyxMWET.jpeg?download=trueGallery: https://beta.parliament.uk/media/IoyxMWET, CC BY 3.0
Daily Mirrow紙が最初にスクープを出したのは昨年11月末のこと。筆者がSpeakUpに投稿したのは、今にもスー・グレイ報告書が出るかという1月20日。ギリギリで、ロンドン首都警察が取り調べを開始すると発表。遅れに遅れたスー・グレイ報告は「取り調べに影響するから」とたった11ページの全体論で終わり。
ロシアとの間で緊張高まるウクライナを元気づけないとと、つかの間の外遊で息をつくボリス氏だったけれど、その間にも新しいパーティ事実は暴露されるわ、証拠写真は出てくるわ… 14年も仕えた私設秘書官もとうとう限界とボリスを去った。一人、また一人と側近中の側近が辞任し、保守党議員が立ち上がって反対側(労働党)の席に座りなおす事態に。
「ごめんなさい、でも、私はやめません!」と金髪振り乱して絶叫するボリスは勇ましい。
このパーティゲート劇場が、モリトモカケサクラ劇場よりも、全然見ごたえがあるのは、メディアや与野党議員による激しい突き上げや激論があるからだと思う。