フランスからもドイツからも、変異株によるコロナ第三波の脅威が伝えられ、筆者が住むベルギーでも改めて封鎖が強化されてしまった。春なのに、寂しい…。そんな中、あちこちで、「ワクチン打ってきたよ」「私は明日よ」などという声が聞こえ始めてきたのは心強い。
このカードは、アストラゼネカのワクチンのものだが、QRコードを読むと、何月何日に何度目のワクチンを接種したかがわかる仕組みになっている。今まさに、EUなどでさかんに議論されているワクチンパスポートなるものは、こんな感じのものをEU共通規格で発行しようということなのか…。とはいえ、アレルギーや免疫疾患、宗教上の理由などで、希望してもワクチンを受けることができない人を差別しないよう、Covid-19既往で抗体があるかどうか、直近のPCR検査結果なども盛り込むものになるらしい。これを持っていると、EU間の移動やイベントへの参加、飲食店の利用などがスムーズになり、社会を少しでも早く以前のように動せるという。それでも、差別や排除につながるリスクがゼロとはいえない。
ワクチン懐疑派が多いと、社会に集団免疫の壁を造ることができない。ワクチン懐疑派を説得しようと、アメリカでは歴代大統領が登場するテレビPRコマーシャルをバンバン流しているという。ベルギーでは、忍び寄るコロナの脅威や家族や友人とも会えない寂しさの「リアル」が悲惨すぎて、ワクチンの順番が回ってくるのを心待ちにしている人が大勢だ。
EUは先週、EU内で製造されたワクチンの輸出について、「相互性」と「コロナ猛威の深刻度」に鑑みて厳しく精査すると決めた。自国内で作ったワクチンを全く輸出しない英米、そして「契約内容」を遵守せず英国優先で出荷してきた某メーカーへのけん制の意味あいが強いが、どちらの尺度に照らし合わせても、EUから日本に来る分が増える根拠にはなりそうにない。
ワクチン接種は先進国では最低レベルで、PCR検査費用が世界一高く、感染しても待機に回されそうな日本で開催されるTokyo2020へ、諸外国の選手たちは向かってくれるのだろうかと考えてしまう…。(執筆は2021年3月29日)